コーヒーは多くのストーリーが存在する

珈琲業界に影響を与える12人の連載コラム第10弾 レックコレクティブ株式会社代表取締役社長 岩瀬由和氏 「コーヒーとの出会い」

【岩瀬由和氏プロフィール】

1981 年愛知県生まれ。レックコレクティブ株式会社代表取締役社長。 2008 年に共同経営者の北添修氏と移動販売にて「 REC COFFEE 」を創業。以後、福岡中心に店舗展開を行う。国内外の競技会へ出場し、入賞を重ねる。 2014 年より 2 年連続でジャパン バリスタ チャンピオンシップ優勝。日本代表としてワールド バリスタ チャンピオンシップに出場し世界準優勝。現在は大会の審査員、セミナー開催など、社内外問わず後進の育成に力を入れており、バリスタ業界への貢献度が高く評価されている。 REC COFFEE としては、福岡県に6店舗、東京都内に1店舗の国内7店舗、 2021 年には初の海外進出となる台湾に旗艦店をオープンさせた。

岩瀬由和氏

コーヒーとの出会い

私のコーヒーとの出会いは幼少期に父親から日曜日の朝になると「コーヒー飲みに行くぞ。」の一言でした。愛知県で生まれ育った私は日曜の朝になると父親のモーニングコーヒーについて行っていました。当然、私の目的はコーヒーではなく、父親とお出かけをすることでそれが何より楽しかったことを覚えています。コーヒーの時間というのは家族や大切な人との時間であり、自身の日常に少しの有意義さを与えてくれるものと子どもながら感じていたのでしょう。
その後、スペシャルティコーヒーと出会うまではコーヒーは「茶褐色で苦味の強い液体(我慢して飲むもの)」だと思っていました。

スペシャルティコーヒーとの出会いは私が23歳の時に偶然にやってきました。たまたまコーヒーショップでアルバイトをしていた時にコーヒーの勉強会をしようという事でコーヒーの飲み比べをしました。テーブルの上に4種のコーヒーが並んでいました。一番美味しかったのはどれかと尋ねられ私が選んだコーヒーは「茶褐色で苦味の強い、いつものコーヒー」でした。それ以外の3種はコーヒーなのに今までに飲んだことがないような透明感がありフルーツみたいな味がしました。「そんなものはコーヒーではない」と胸を張って言い切りました。これが私のスペシャルティコーヒーの出会いでカルチャーショックと何も知らない悔しさ、そして初めてコーヒーに品質や味を感じた瞬間でした。人生で初めて本物に触れた気がして興奮しました。コーヒーを自分の仕事にしたいと思った瞬間でもありました。

コーヒービジネスについて

アルバイト時代にスペシャルティコーヒーに出会いコーヒーの品質やエスプレッソの魅力に取り憑かれていた私は自身でコーヒーのビジネスを行いたいと思うようになりました。当時はお店をスタートさせるだけの資金も人脈もありませんでしたが思いつきでコーヒーの移動販売店舗をする事を決意しました。そこで北添(REC COFFEE共同代表)とコーヒーの移動販売をスタートさせたのがREC COFFEEの始まりです。

私がスペシャルティコーヒーに出会った時と同じような「驚き」を沢山の人に伝えるために、そしてバリスタの技術とサービスでその「驚き」を「感動的な体験」として届けたい。そんな想いで日々お客様と接してきました。店舗数を少しずつ増やし、より品質の高いコーヒーとその味わいを引き出せるような技術、サービスを目指しバリスタチャンピオンシップに取り組むようにもなったのです。

コーヒーが私の人生に与えた影響

コーヒーが私の人生に与えた影響はとても大きいものです。コーヒーに携わることで多くの経験をし、多くの方に出会い世界が広がりました。
そのような経験はバリスタチャンピオンシップへ取り組んだことから始まりました。バリスタチャンピオンシップに初めて出場したのは2008年の移動販売を創業した年でした。当時の私はスペシャルティコーヒーのことやエスプレッソに関して無知で「何が美味しいエスプレッソなのか」の答えを知るために競技会に取り組み、その過程でコーヒーへの理解を深め技術習得したいと考えていました。当然競技会の成績、順位など気にするわけでもなく、ただ「何が美味しいコーヒーかを知りたい、提供できるようになりたい」という一心でした。

翌年、ジャパンバリスタチャンピオンシップの決勝を見学しに行った際にその舞台で競技を行うトップバリスタに私はただ見とれていました。技術、知識、サービスそのどれもが素晴らしく「僕もあの舞台に立ちたい、僕も日々接するお客様にもっとワクワクを届けるんだ」と強く思った事を覚えています。
そこから2016年の世界大会(ワールドバリスタチャンピオンシップ)で準優勝するまでの間は多くの方々に支えて頂き多くの挑戦をさせて頂きました。またそれ以上の挫折も繰り返しました。自身の技術習得の為からスタートした私の競技会への取り組は次第に客様の為、仲間の為、応援して支えてくれる人の為、コーヒー業界の為となり日々自分の存在意義を考え実感するようになりました。

「いつも謙虚に、いつも力強く自信を持って」そんな事を考え取り組む毎日でした。コーヒーを通して世界と繋がり私の人生は以前とは全く違うものとなりました。より一杯のコーヒーが尊いものと感じるようになりました。

私にとってコーヒーとは

コーヒーは国籍、人種、宗教、政治などの違いを超えて世界中で毎日、毎日多くの人に楽しまれている、また多くの人々がコーヒー産業に従事しています。
ただの「茶褐色で苦味の強い液体」に品質(おいしい)という新たな概念ができてコーヒーには新しいマーケットが生まれています。

私たちは街のコーヒーショップであり、街やお客様に寄り添う存在です。お客様に提供する1杯のコーヒーの背景には産地から繋がる本当多くのストーリーがあります。私たちはコーヒーの産地から繋がったストーリーの最終提供者でもあります。そんな魅力的なビジネスに携われている事を誇りに思っています。
コーヒーとは多くの人々が携わったストーリーを楽しむものでありながら、私たちの日常に束の間の有意義さを与えてくれるものです。コーヒーって楽しい。