「コーヒーは世界との繋がり」 COFFEE COUNTYオーナー森崇顕氏

【森 崇顕氏プロフィール】

1980年生まれ。2013年5月〜7月の約三ヶ月間グァテマラのカップオブエクセレンス審査会への参加に始まり、ニカラグアのコーヒー農園に滞在、生産現場に入りコーヒー作りを学ぶ。ニカラグアを拠点に中米各国のコーヒー農園を訪ね、ニカラグアからフランス、ニースで開催(六月末)されたWorld Coffee Roasting Challenge 2013に日本代表選手のコーチとして招聘され参加し、日本代表選手が世界一となる。2013年9月に開業、同年11月福岡県久留米市に焙煎所兼店舗をオープンし、その後も買い付けのため世界各地を視察。2016年9月福岡市高砂に「Coffee Bar & Shop」をオープン、2019年2月には久留米店を移転オープンした。COFFEE COUNTY(コーヒーカウンティ)代表。

コーヒーとの出会い

出会いは20歳の頃でした。都内の大学に通っていた私は行きつけの下北沢の美容室で初めてパーマをかけることにしました。なにやらパーマ液をかけて髪をくるくる巻いて透明のカバーをかけて宙に浮いた大きなヘルメットのようなもので頭を温めている最中ほとんど身動き取れない状況で、その時出してくれた飲み物がコーヒーでした。そのコーヒーの香りによって心身ともにほぐれる感覚がありました。そう、リラックス効果。

コーヒーとの出会い

コーヒーに対してのイメージが180度転換した私は、そこから近所の専門店に豆を買いに行き、コーヒーミルやドリップケトル等一式を購入、友人の家に行ってコーヒーを淹れ、飲ませる。そんな大学生活に一気に変わっていったのです。

さて、その美容室で飲んだ一杯のコーヒー、後々何のコーヒーだったのか尋ねたのですが、インスタントコーヒーでした。いまではインスタントコーヒーを自ら好んで飲むことは滅多にありませんが、プロとなって改めて思うのはその味だけではなくコーヒーの持つ普遍的な力の凄さです。リラックス(鎮静)効果と興奮作用を併せ持った類い稀な飲み物ですよね。だから世界で最も広く飲まれる飲料の一つとなっているのだと思います。

人生に与えた影響

この美容室での体験からコーヒーに急激に、そしてすっかりハマってしまった私は、都内のコーヒーショップを飲み歩き、自宅でコーヒーを淹れ、また友人に振る舞い等々しているうちに、すっかりこのコーヒーがある生活を自分にとって欠かせないものと考えるようになりました。そしていつのまにか自分のコーヒーショップを開くことが人生の目標になり、大学卒業後はコーヒーショップで働き始めることを選びました。そこから今に至るまでは様々な困難がありましたが、コーヒーとともに成長してこられたから今もなお、コーヒーとともに歩んでいるのだと思います。

コーヒービジネスについて

ロースター、つまり焙煎コーヒー豆の販売を主としている立場からサスティナビリティについての考えも含めて少しお話しします。

当然ですが原料であるコーヒー生豆の生産は各国の生産者が行い、我々はそれを購入、焙煎し販売します。生豆の買い付けに赴く生産国にニカラグア、ホンジュラス、エチオピア、グァテマラなどがありますが、直接訪ねるからこそ生産者が置かれている様々な状況に直面します。

2020年のホンジュラスの買い付けでは旧知の生産者が、それまで販売していたアメリカのロースターが新型コロナウィルスの影響で複数店舗を閉めるので買い付け量が激減、その分を購入してくれないかと持ちかけられました。その全量を買い付け、自店で販売する他に、他店にも協力を仰ぎ一部生豆の販売を行い、完売とすることができました。

また、2018年のニカラグアでは、開店当初から取り扱いしてきた農園が、気候不順、人手不足、生産コスト増大といった様々な要因が重なり、コーヒーの収穫ができず、農園を手放す危機にありました。結局買い手がつかず農園の売却には至りませんでしたが、困難な状況は変わりません。翌年幾らかの収穫があり、当店向けのロットを作っていただきました。そんな苦境のなかでも生産されたコーヒーの品質は素晴らしいものでした。そこでそのコーヒーによる当店の売り上げの20%を寄付し、生産者を励ますことにしました。結果50万円超の寄付ができました。

このように目の前で起こった問題に受動的に対応しているまでですが、我々は生産者が作った農産物を購入、焙煎、販売し生計を立てている以上、このビジネスにおける橋渡しとしての役割をしっかりと受け止め、考えて行く必要があります。コーヒーが繋ぐ循環を意識し、わずかでも行動を起こしていくこと、お客さまに伝えて続けていくことがサスティナビリティに繋がっていくものだと考えています。

自分にとってコーヒーとは

世界との繋がり、そしてそこから生まれる責任。

コーヒーに関わっていなかったら出会うことはなかったであろう土地や生産者、世界中のコーヒーショップの人々、そしてもちろん自分の手を経たコーヒーを飲んでくれる方たち。生産地に赴くことで訪れる様々な出会いが日々の原動力になっています。

私はお酒が好きでワインも非常に興味を持って接しています。ワインは出し手がどれくらい熟成させるかという部分はありますが、作り手側でボトリングされた時点でほぼ完成されたものです。コーヒーはその点、我々が焙煎・抽出して初めて飲み手に届く。自分も一杯のコーヒーを形作る要素の一部分を担っているというところが自分にとってコーヒーの魅力的な部分で、飽きない。素晴らしいコーヒーこそが、美味しく伝えないとという使命感、責任感を与えてくれるのです。