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バリスタ・バーテンダーが創るコーヒーカクテルの世界~込められたコーヒーへの想いとは~ 第2回「The Bellwood」編

トマトウォーター×コーヒーの融合でうまれる軽やかな味わいのコーヒーカクテル

トマトウォーター×コーヒーの融合でうまれる軽やかな味わいのコーヒーカクテル

コーヒーカクテルをめぐる連載第2回は、2020年6月20日にグランドオープンした、渋谷『The Bellwood』のオーナーバーテンダー、鈴木敦さんが登場。カクテルのみならずスペシャルティコーヒーを愉しむことができるバーだ。海外のカクテルカルチャーに精通するバーテンダー・鈴木さんが提案するコーヒーカクテルとは?

渋谷『The Bellwood』オーナーバーテンダー 鈴木敦氏

【プロフィール】

1984年、東京都葛飾区出身。高校卒業後、都内のバーで経験を積み、24歳で渡米。ニューヨークの名バー「エンジェルシェア」で、現「SG Group」ファウンダーの後閑信吾氏と出会う。さらにロンドン、カナダでバーテンディングを研鑽。2013年にはトロントで開催された「Buffalo Trace Cocktail Competition」で優勝。2016年、現在のパートナーであり、「Speak Low」を開いた後閑氏から上海でのヘッドバーテンダーのオファーを受け中国へ。同年、欧州スペシャルティコーヒー協会によるコーヒーカクテルの大会「World Coffee in Good Spirits」の審査員を務める。2017年「Sober Company」が上海にオープンし、自身も本格的にコーヒーカクテルを向き合うように。同年、中国代表としてCHIVAS Mastersに出場し、世界大会で優勝を飾る。

鈴木敦氏

鈴木敦さん初プロデュースバーので大正モダンの味わいを

日中でも夜でも、初めての訪問だとしても、このバーに一歩足を踏み入れれば、上質な心地よさにすぐ心がほどけてしまうだろう。カウンターや革張りの椅子、磨かれたシェイカーやボトルに温かみのある明かりが艶やかに光を落とす。

バーのイメージは、明治後期から大正期に「カフェー」と呼ばれ、日本におけるバーの前身ともなった特殊喫茶。コーヒーのみならず、お酒や料理も提供していた喫茶である。 そのため、社交場のような空間ではお酒はもとより料理も楽しめ、スペシャルティコーヒーも味わえる。ザ・ベルウッドオリジナルブレンド、ブラジル、ケニアといった3種も揃うことは、バーでは珍しい。

「コンセプトは大正モダンのカフェーです。コーヒーは名古屋の『ボンタイン珈琲』にお願いしていて、ブレンドも昔の喫茶店で出していたような深み、コクのあるものをリクエストしました。シグネチャーカクテルの『SUPER MORNI(超もおに)』は、そのコーヒーに合わせてつくり上げたものです」

と鈴木さんは教えてくれた。

『The Bellwood』は渋谷『The SG Club』を運営するSG Groupの国内2店舗目で、鈴木敦さんの初プロデュースバーとなる。

鈴木敦さん初プロデュースバーので大正モダンの味わいを

バックバーには開閉可能な戸が付いており、日中など酒瓶が見えないよう閉じて営業することも。

海外のカクテルカルチャーに触れた鈴木さんにとってコーヒーカクテルとは

鈴木さんによると、ここ数年でコーヒーカクテルを頼むお客が増えたため、1、2種は必ずメニューに載せているという。

「海外でも同じ傾向がみられます。2016年にコーヒーカクテルの世界大会『World Coffee in Good Spirits』で「Savoy hotel American bar」の元シニアバーテンダー、Martin Hudak氏が優勝したことや、ロンドンの人気バー『Termini』、さらには昨年World’s 50 Best Barsで1位になったニューヨークにある『Caffe Dante』などコーヒーカクテルの存在も影響しているのかもしれません。

それまでカフェとバーは別ジャンルのように考えられていましたが、その境界線が融合しコーヒー好きとカクテル好きの距離が近づいた印象です。」

バックバーに数々のボトルが並び、カクテルづくりの多種の素材に囲まれる鈴木さんにとって、コーヒーカクテルはどんな立ち位置なのか?

「僕にとってコーヒーカクテルは、バーで楽しむカクテルの中のチョイスの1つです。ただ全てのコーヒーカクテルに対してコーヒーをベースにカクテルを構築していくわけではなく、コーヒーはあくまでもひとつのエレメンツ(素材)として捉えていて、主張させたい味とそのほかの材料のバランスを一番大事にしています。」

コーヒー×米焼酎×手製トマトウォーターで軽やかな味わいを自宅で

コーヒー×米焼酎×手製トマトウォーターで軽やかな味わいを自宅で

カクテルのベースは、『The SG Club』オリジナルの米焼酎。

自宅でつくれるコーヒーカクテルを鈴木さんにも教えてもらった。

【鈴木さんからのコメント】
「今回提案するホームカクテルでは、トマトウォータ―というものを使います。ブレンダーなどにかけたトマトを漉して、透明にしたものです。少し手間はかかりますが、すっきりとしたトマトの酸味が特徴でトマトジュースが苦手な方でも飲める(かも)、さっぱりとした味わいになります。

カクテルのベースには米焼酎を使用し、コーヒーはブラジル産のナチュラル製法の豆を中深煎りで使用。そこにトマトウォーターの自然な酸味とエルダーフラワーの華やかさを加え、日夜問わず、食中でも飲めるカクテルに仕上げました。

カクテルの名前は『ニッケイオリジン』と名付けました。The Bellwoodのコンセプトでもある大正時代や明治時代後期は日本からブラジルへ移民する人々が多かった時代。 先人が築いた異国の地での日系文化と日本の焼酎を合わせ、ニッケイオリジンという名の新しいコーヒーをイメージしたカクテルです。

当時の時代背景に想いを重ね合わせながら味わってみてください。」 

〈材料〉

深みのあるコーヒー豆(今回は、ブラジルのナチュラル・中深煎りを使用)……20g
The SG Shochu KOME(米焼酎)……20ml
トマトウォーター……20ml
サンジェルマン エルダーフラワー(リキュール)……5ml
レモン果汁……1バーティースプーン
プレーンシロップ……1バーティースプーン

〈つくり方〉

①トマトウォーターをつくる。
トマトをミキサーなどにかけた後、ザルまたはコーヒーフィルターで透明になるまで漉す。

②コーヒーを入れる
コーヒー豆を挽き、ドリッパーにセットしてお湯160ml(分量外)を注いで抽出する。

コーヒー豆
お湯を注いで抽出

③ミキシンググラスで素材を合わせる
ミキシンググラスに、氷と②、その他の材料すべてを入れてステアする。

ミキシンググラスで素材を合わせる

④グラスに注ぐ
指先に冷たさが伝わるほどに冷えたら、ストレーナーで漉しながらグラスに注いで完成。

グラスに注ぐ

 

余韻が心地いいツイストカクテル『SUPER MORNI』はぜひ『The Bellwood』で愉しんで

SUPER MORNI

シグネチャーカクテル「SUPER MORNI(超もおに)」。ブレンドのコールドブリューにオレンジ果汁をたっぷり搾り、ヨーグルトで色素を除いたカンパリ、レモン果汁を合わせ、トニックウォーターでアップする。

『The Bellwood』に訪れた際にぜひ味わってもらいたいのが、カンパリカクテルの代表格『スプモーニ』をブラッシュアップした『SUPER MORNI(超もおに)』ある。

カンパリは、ヨーグルトと一緒にコーヒーフィルターで漉すことで、色素が消え、丸みのある乳酸感が加わっている。そこへカクテルに深みとコクを加えるためにコーヒーを合わせる。

そうすることで軽やかな苦味、コクそこにオレンジのフルーティーさとバジルの香りを合わせた余韻の心地いいカクテルに仕上がっている。

味わいもさることながら、ネーミングにもひと捻りあり、コーヒーの風味は冴えながらもフレッシュな飲み心地で、深夜に飲んだとしてもさわやかな香気に包まれそうだ。

▼お店データ

The Bellwood
東京都渋谷区宇田川町41-31
03-6452-5077
営業時間:18:00~翌1:30(L.O.)翌2:00(L.O. 1:30)、土・日曜、祝日は11:00~翌2:00(ブランチ11:00~16:00)
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間やお休みが変更する可能性がございます。
定休日:無休
アクセス:JR・東京メトロ・私鉄「渋谷駅」より9分
店舗URL:https://www.facebook.com/thebellwood

▼クレジット&プロフィール

写真:Sonia Cao 文:沼 由美子

Sonia Cao (ソニア・カォ)
コミュニティ デザイナー/フォトグラファー
デジタルエージェンシーにてソーシャルメディアマーケティングの分野で、様々な業界の企業・ブラント・商品とユーザーの間のコミュニケーション強化に関わる仕事を経てから、強いコーヒーとカクテル愛が募り、今はフリーランスとして飲食業界のプロモーション事業に従事。バリスタとバーテンダーの架け橋としても活動。

沼 由美子
ライター/編集者
横浜生まれ、東京住まい。バー巡りがライフワーク。とくに日本のバー文化の黎明期を支えてきた“おじいさんバーテンダー”にシビれる。醸造酒、蒸留酒も共に愛しており、フルーツブランデーに関しては東欧やアルザスの蒸留所を訪ねるほど惹かれている。最近は、まわれどまわれどその魅力が尽きることのない懐深き街、浅草を探訪する日々。