コーヒーって人工交配できるの?人工交配した品種とその特徴や成り立ち

人工交配した品種とその特徴や成り立ち

コーヒーは、何となく自然のままに栽培されているイメージを持たれていますが、実は自然交配以外にも研究によって人工交配された種もあります。今回のコラムでは、雑学として知っておきたいコーヒー豆の人工交配とその特徴や成り立ちについて解説します。

コーヒーのハイブリット種って?

コーヒーは、大きく分けてアラビカ種とカネフォラ種(ロブスタ種)の2種類に分けられます。

この2つの種は、植物学上、別々の植物とされて自然交配は起こりえないと考えられていましたが、東ティモールで一緒に栽培していたところ、偶然交配されて「ティモール(ハイブリット)」と呼ばれるハイブリット種が生まれました。

このハイブリット種を東ティモールで研究した結果、さび病などの病害や環境に強いことがわかり各国も研究を進めた結果、さまざまな栽培品種が生まれました。

例えば、アラビカ種には、ティピカやブルボン、ゲイシャなどの品種があります。

これらは突然変異や交配によって生まれましたが、エチオピアの原種に近いため、木が大きく成長して収穫が困難になります。

また、生産量も少なく病気になりやすい品種ですが、風味は豊かとされています。

一方、ティピカから突然変異したスマトラとブルボンの突然変異や、交配によって出現したカトゥーラ、ムンドノーボなどは、栽培しやすく生産性が高い反面、風味が原種よりも劣ると言われてきました。

しかし、近年では、風味の向上を求めて作られた改良品種やカネフォラ種の耐病性とアラビカ種の性質を持ち合わせたハイブリット種が生み出されました。その結果、生産量が増えた上に味や風味の良いコーヒーが増えてきています。

ちょっと豆知識1.アラビカ種とカネフォラ種(ロブスタ種)の違いって?
アラビカ種は、エチオピアの高原が原産でコーヒーとして世界中に広まった最初の品種です。さび病などの病気に弱く気候や風土、土壌などは限定されてしまいますが、風味豊かなため他の品種よりも高額で取り引きされています。

カネフォラ種(ロブスタ種)は、中央アフリカが原産で、「強靭な」と言う意味のロブスタが使われていることからもわかるようにアラビカ種よりも病気に強い品種です。

熱帯の低地でも栽培できることから生産量も多く価格帯も低いですが、アラビカ種よりも風味が劣るとされ、インスタントコーヒーや安価なレギュラーコーヒーにブレンドされて使用されています。

ちょっと豆知識2. さび病
コーヒーの病気で一番恐れられているのが「さび病」です。さび病は、コーヒーの葉にカビが付く伝染病で、このカビが付いた葉が増えていくと、葉が落ち光合成ができなくなり木が枯れてしまいます。

さび病は、空気感染するので、他のコーヒーの木にも広がり、この病気のために短い期間で産地のコーヒーの木が全滅してしまうこともあります。

さび病の被害で有名なのがスリランカです。かつてスリランカのセイロン島では、コーヒーを栽培していましたが、さび病が大流行し10年ほどで全滅しました。そのため、コーヒー栽培を諦め紅茶の栽培に舵を切った歴史があります。

ハイブリット種の種類と特徴・成り立ち

では、ハイブリット種には、どのような種類と特徴、成り立ちがあるのでしょうか。

ティモール(ティモール・ハイブリット)
ティモール(ティモール・ハイブリット)は、1927年に染色数が変異したカネフォラ種がアラビカ種と交配してできた世界初のハイブリット種です。

その後の研究で、ティモールは、耐病性が強く他のアラビカ種との交配も可能であることがわかり、さび病で苦しんでいた他の国も研究を重ね、現在では、遺伝子源として世界中の地域で使用されて、多くのハイブリット種が生まれています。

しかし、ティモールの味や香りは、カネフォラ種よりも少し良い程度だったため、飲用として大々的に栽培されることはなく、あまり流通していません。そのティモールの味は、苦みや酸味、香りが控えめで独特のコクと全体的なマイルドさが特徴です。

カティモール
ポルトガルのさび病研究所にティモール・ハイブリット種が持ち込まれたのが1850年後半です。

そして、1960年代後半にティモール・ハイブリットとカトゥーラの交配種が開発され、ティモールが作られました。

その後、ブラジルのヴィソーザ連邦大学でさらなる改良が行われ、1970年代には、コスタリカの熱帯農業研究教育センターからラテンアメリカ各地へと広がっていきます。

このカティモールは、ティモール・ハイブリットが持つ耐病性と、カトゥーラの矮小種と言う特性を持っているので、さび病に強く収穫量の多さから生産者にとって非常にメリットの多い品種として人気があります。

しかし、カネフォラ種の遺伝子も持っているカティモールは、アラビカ種に比べて風味が落ちると言われています。

また、他の品種と比べて成長が早いカティモールは、糖度が高くなる前に収穫されるため、味が良くないとされていました。

しかし、標高の高いエリアで、丁寧に生産されたカティモールは、個性を感じられる美味しいコーヒーになることがわかり、評価が上がってきています。

カティモールは、メキシコやホンジュラスなどの中央・南アメリカ、アフリカのマラウイ、東南アジアのベトナム、タイなどの多くの地域で栽培されています。

ちょっと豆知識3. カティモールは総称
カティモールは、一つの品種ではなく、カトゥーラとティモール・ハイブリットの交配によってできた種類(T-5175、T-5269、コスタリカ65など)のグループの総称として使われています。

サルチモール
ポルトガルのさび病研究所にティモール・ハイブリットが持ち込まれたのは1950年代後半のことです。そして、1960年代後半にビジャサルチとティモール・ハイブリットの交配種にH361と言うコードが付けられ、サルチモールができました。

その後、ブラジルのカンピーナス農業試験場でいくつかのテストを行った後、1970年代に試験生産のため中南米各国の研究機関やアフリカ、東南アジアの国々に送りました。その結果、コスタリカの熱帯農業研究教育センターで研究されていた品種にT-5296と言うコードが付き中南米各地へと広がっていきました。

このT-5296はさらに選別が行われ、ホンジュラスではパライネラと、エルサルバドルでは、クスカトレコ、ブラジルでは、トゥピ、オバタなどの名前が付けられ流通しています。

ちょっと豆知識4.サチモールも総称
カティモールと同様、サチモールも一つの品種ではなく、ビジャサルチとティモール・ハイブリットの交配種(T-5296、IAPAR59、マルセレサなど)の総称をサチモールと呼んでいます。

ルイル11
ケニアのコーヒー研究所は、1970年から品種改良を始めSL-28やSL-34、K7、ルメー・スーダンなどの複数品種を掛け合わせ、さらにカティモールと交配させてハイブリット種を作り上げました。

このハイブリット種は、コーヒー研究所のある街の名前にちなんでルイル11と名付けられ1985年に品種発表された歴史があります。

コーヒー栽培に悪影響を与える病害への耐性種を作ることを目的にして作られたルイル11は、炭疽病(CBD)への高い耐性が最大の特徴と言われています。

また、コーヒーは種をまいてから収穫するまでに3年以上かかりますが、このルイル11は、初収穫まで2年と期間が短く、高密度で栽培できることから栽培者に人気のある品種です。

ルイル11は、SL-28やSL-34、ブルボンなどの風味が良い品種の遺伝子が入っているので、コーヒー豆の特徴もしっかりと感じ、美味しいと評価されています。

ちょっと豆知識5.炭疽病って?
炭疽病は、伝染力の強い菌が原因で発生する病気です。

この菌が伝染すると、樹皮内で胞子を増やしあらゆる部位に広がり、実が熟す前にコーヒーチェリーが落下してしまいます。そのため、コーヒーチェリーを収穫することができなくなり、大きな被害をもたらします。

進化し続けるコーヒー

コーヒー栽培に壊滅的な被害をもたらすさび病や炭疽病に強い品種を作るために研究を重ねてできたハイブリット種のコーヒー。

最初は、味が良くないと言われていましたが、さらなる研究により美味しいハイブリット種のコーヒーが生み出されてきました。そして、これからも美味しいコーヒーを作り出していくことでしょう。

ここからさらに、品質の向上や維持で私たちの飲むコーヒーの質が上がっていくのです。

今は出来る限り現代技術を使わない『自然派』なものが流行ですが、それには限りがありますね。

人工交配と言っても人工物ではなく、コーヒーは自然の恵みそのものです。

私たちが飲むコーヒーは、安全であり、かつ安定した供給と安定した品質を約束されています。

自然の恵みと現代技術にあやかって、1杯のコーヒーのありがたみを感じながら頂きましょう。

自分が日常的に口にしているものをよく知ることは大事です。

まずは、今飲んでいるコーヒーはどこから来たものなのかというところから、「毎日の美味しいコーヒー」についてを考えてみませんか?

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